「来斗はねー、本に集中すると自分の世界に入っちゃうんだよぉー」


翼が丁寧に解説してくれる。


「昔からの悪い癖でねぇ、周りが見えなくなっちゃうの。だから、きっと初がいることにも気づいてないと思うよ~?」


春はこほんと一つ咳払いをすると、来斗と呼ばれた男の子が座っているソファーに近づいていった。


そしてばっと本を奪った。

その瞬間、ちらりと本の背表紙に書かれているタイトルが見えた。


“浮気夫へ。~女たちの逆襲~”


「…(初)」


「お前本読むのはいいけど、ちゃんと人の話聞いとけよ」


「そうだよー、読書するのはいいことだけど、周りを見なくちゃ、めっ!だよ!」


眉を上げて怒ったように見せる翼。


え?スルー?みんなそんなことよりもっとつっこむところないの??