「お名前なんて言うの?」

「あ、初ですっ」


私はぺこりとお辞儀をした。


「へぇー、僕はね、翼!翼って呼んで?」


「翼…君」


私はぽつりと呟いた。


「俺は、春。春夏秋冬の略語の春」


春君は自慢気にふふんとどや顔をする。


…一体どこら辺が略してあるのだろうか。


一文字取っただけじゃね?って思ったけど、なんか満足そうだし。


私の胸に秘めておこう。…うん。


「あ、あと、“君”つけたらダメだよ?」


春君が思い出したように付け加えた。


「え?」


「家族になるんだし、“君”呼びは変でしょ?」


言われてみて私は納得した。