住職さんが、頷く。
もしかして。
この人は、わかっていたのかもしれない。
マコトが、大学に行きたがっていること。
マコトは、こんな人に育てられたんだ。
頑固そうで、でもきちんとマコトのことを見てくれている。
信頼できる人のように、思えた。
マコトがあんなに素直で優しい子に育ったんだから、当然かもしれないけど。
「立ち話ですまなかった。よかったら入るかね?麦茶位しか出せないが」
言われて、長居していたことに、気付いた。
今またマコトに会うのは、マコトを戸惑わせてしまうだろう。
「いえ、突然すみませんでした。もう帰ります」
「親御さんにも、よろしくな。なにか聞かれたら、こちらの心配は、どんな意味でもいらんとだけ言ってくれ」
「大丈夫です。ここのことは俺しか知りません」
「そうか」
住職さんが、ほっとしたように息をつく。
そうして、頭を撫でながら、笑った。
「私は、誠のことが大切なんだよ」