「今日は遅いから、もう寝なさい」
「でも、境内のそうじがまだ」
「今日はいい。明日も学校だろう」
どうしたんだろう。
父さんが、こんなこと言うの、初めてだ。
帰りが遅くなった時や、決まりが守れなかった時は、大声で叱られて、御堂で正座させられるのに。
あんまり父さんが静かだと、かえって心配になってくる。
「父さん」
「どうした」
「何か、あったの?」
「何も、別にないぞ。おまえだってもう高校生だ。友達の付き合いで、遅くなることもあるだろう」
言って、父さんがボクの肩を叩く。
「おまえのことは、信用しているから」