「ボクは、でも」
「確かに、今まで少し厳しすぎたかもしれないな。遊ぶ時間もなかったから、いまだに彼女のひとりもできないし」
父さんが、振り返る。
「いいぞ、行きたい大学があるなら、受験しても」
「父さん…」
「少し友達を増やして、大学で彼女でも見つけて来てくれれば、孫の心配もなくなるからな」
父さんが、笑う。
絶対、怒られると思っていたのに。
でも。
大学に行ってもいいって、許してくれたのに。
なんだか、ちっとも嬉しくない。
父さんは、ボクが女の子と付き合わないのは、その暇がないからだと思ってたんだ。
そうじゃないのに。
大学に行っても、きっと、父さんに彼女なんて、見せてあげられない。