「……父さん」



作務衣に着替えて、境内に出る。



父さんは、境内の御神木の前に立っていた。



門の方を見つめたままで。



「……ごめんなさい」



「誠。大学に、行きたいのか?」



「え…?」



まったく予想していなかった父さんの言葉に、ボクは戸惑った。



そんなの、行けるならいきたいに決まっている。



でも、跡取りになるには不必要だっていうことも、わかっている。



ただ行きたいというだけで費やすには、月日も、学費も大きすぎるから。