「陸さんのお母さんって、優しい人なんですね」


陸さんの部屋で。
ふたりだけになって、ボクは陸さんに、言った。


「そんなことないよ。おやじと離婚して、女手一つで会社を大きくしてきた人だからな。こうと決めたら、俺の意見なんか聞きやしない」
「でもきっと、陸さんが本当に嫌なことは、させないと思います」


たぶん、だから。
陸さんが、本当にボクのことを大切に思ってくれているから。
だから陸さんのお母さんは、ボクを受け入れてくれたんだ。
別れろって強制されて、叩き出されても仕方ないくらいなのに。


「ボク、ほんとにみんなに、優しくしてもらってる」
「マコト。それはちょっとちがうよ」


言って、陸さんが、ボクの頭をなでてくれる。


「マコトがいい子だから。マコトがいつでも優しい気持ちでいるから、きっとみんな、マコトに優しい気持ちを返しているんだ」


見つめてくる陸さんに、ボクは、ドキドキする。
ほんとに、ボク、陸さんが大好きなんだ。