お願いだから。
もう、向こうに行ってよ。吉田。

そうしないと。
ここでだけは、倒れたくなんかないんだよ。


「……ほんとうに、大丈夫なんだな?」
「あたりまえだよ」
「絶対、連絡しろよ。俺も終わったら、病院行くからさ」
「……ありがとう」


多分。
吉田には、伝わったんだ。
ボクが、ひとりで行きたい、って思っていること。
心配かけたくないっていう、思い。


ありがとうね、吉田。


吉田が、校庭に駆け戻っていく。
ボクは、一歩校門から足を踏み出した。


秋の、眩しい太陽。


その光を背に受けて、黒い人影が、ボクの前に立っている。
名前を呼ばれたような気がしたけれど、ボクはそのまま気を失ってしまった。