「マコト、保健室まで、一緒に行こう」
「大丈夫だよ。でも、病院には、行ってくるね。ひとりで、大丈夫だから」


ボクは、精一杯笑顔を作って、言った。
足がふらついたり、倒れたりしたら、絶対ひとりでなんか行かせてくれないって、わかってるから。
意識して、少し早足に、校門に向かって歩いた。


「マコト、おい」


呼吸するたびに、胸が痛い。
時々吸うようにしてた酸素スプレーも、もう残りが少なそう。

それでも。
みんなに見られている間は、しっかりしなくちゃ。

校門を出るまでは。


「マコト!」


吉田が、追いかけてくる。

だめだよ。
吉田は、ちゃんと表彰式に残ってなくちゃ。


「俺も行くからな」
「ほんとに大丈夫なんだよ。吉田は、表彰式に出なくちゃ。後で、連絡するから」
「だっておまえ、調子悪いんだろ?だから病院に」
「違うよ。先生と、約束したのに、走っちゃったから。謝って、念のため診てもらうだけだよ」