「伝説更新、って感じだよな」
「やっぱおまえすごいよ、誠。こんだけハンデあって、半周差追い越すんだからな」


っていうことは。


「勝った、んだ」
「ああ、他の奴らボヤいてたぜ。朝練はフェイントだったのか、ってさ」


そんなつもりじゃ、なかったけど。


「やっぱ、とびきりの秘密兵器だったな」


よかった。

絶対、勝ちたいって、思ったけど。


でも。
走れないかもって、ほんとはちょっと、思ってた。


走れたんだ。
ボク、ほんとに、ちゃんと、走れたんだ。

苦しいし、身体も震えるし、目の前もまだ暗いけど。
でも、走れたことが、嬉しい。


「マコト、動けるか?」


吉田が、心配そうに、間近にボクの顔を覗き込む。