一瞬、世界が回転した。
苦しくて、息をしたとたん、咳が止まらなくなる。


「ありえねーぞ、おまえ」


口元に、スプレーの酸素があてられている。


「朝の走りっぷりはなんだったんだよ。去年より早いじゃねーか」


多分、林くんの、声。
でも、目の前が暗くて、耳鳴りがして、頭も痛くて。
なんだか、周りの様子が、よくわからない。

ボク、どうなったの?
勝ったの?
それとも、ダメだったの?


「苦しいか?」


聞かれて、ボクは首を横に振った。

苦しいけど。

でも、自分でやりたいことをしたんだから。
苦しいなんて、言えない。