「あれ?君」


急に。


後ろから声をかけられて、ボクはびくっ、と固まった。



あの人だ。



振り返る前から、わかった。


お店の人と喋っていた時の、少し高くて、優しい、深い声。


振り返ると、やっぱり、あの人が笑っている。


少し心配そうに、目を眇めて。


「どうしたの?こんな時間に。いつもは友達と昼間に来てるよね?」


「あの、こんばんは」


どうしていいかわからなくて、ボクは頭を下げた。


あなたを探しに来たなんて、もし言ったら、きっと、気味悪がられるだろう。

自分でも、どうして来ちゃったのか、わからないのに。