「今日走れなかったら、ボク、いちばん大切なこと、諦めなくちゃいけない。でもボク、絶対にあきらめたくないんだ。大好きな人、忘れたくないんだ」
「マコト!おまえ、あんなにひどいこと言われて、どうしてそれでも、あいつのこと好きだなんて言えるんだよ!」


吉田が、怒ったように言う。
吉田は、陸さんのこと、嫌いだもんね。
でも、ボクにとっては、大好きな、大切な人、なんだ。
このままなんていやだ。
もしかして、陸さんが今日来てくれたら。
陸さんの前で、走ることができたら。
ボクにも、できることがあるんだって、陸さんに見せることができたら。

そしたら、陸さん、また、笑ってくれる。
きっと、笑ってくれるから。


このままで終わりなんて、陸さんと会えないなんて、ボク、絶対に嫌なんだ。


「なんだか、よくわかんねぇけどさ。……補欠だぜ?走れるとは限らない。それで、いいのか?」
「うん。だって……みんな選手として頑張ってきたのに、変わってほしいなんて言えない。でも、せめて、可能性だけは、持っていたいんだ。……わがままで、ごめんね?」