「マコト」


吉田が、困ったようにボクを見る。


「ちょっと、試してみるだけだから。だって、これでホントに走れなかったら、ボク、補欠失格だし」
「マコトが出なくちゃならないようなこと、なるわけないだろ」
「お願いだよ、吉田。ちょっとで、いいんだ」


本番で走れないなら。
せめて、練習だけでも、走りたい。
この、グラウンドで。


「……絶対、無理すんなよ。マコト」


心配そうに、顔をしかめたままで。
それでも吉田が、しぶしぶ頷いてくれる。


「うん。大丈夫だよ」