「林に、言われたのか」
「あのね」

吉田に言おうとして、ボクは、ためらった。
林くんのお父さんが、あのトラックの運転してたおじさんだ、っていうこと。
多分林くんは、誰にも知られたくなかったんだ。
だけど、ボクには話してくれた。
だからたとえ吉田にでも、ボクから話しちゃいけないこと、なんだ。

「なんだよ、マコト」
「うん。林くんはね、ボクに走れるのか?って訊いてくれたんだ。ボクのこと好きとか嫌いとか、怪我してるとか、そんなこと関係なしに、走れるのか?勝てるのか?って。うまく言えないけど、なんだか、嬉しかった」

戦力として、考えてくれた、っていうことだもんね。
他のみんなが、最初からダメって思ってたのに。
ボク自身も、いつの間にかそう思ってた。
そのなかで林くんだけが、ボクが走ることを考えてくれてたんだ。

「なんでそれが嬉しいんだよ。ホント、マコトってお人好しだよな」
「そうかなあ」

そんなこと、ないと思うけどな。