注文していたザジキを受け取りながら、ボクは、視線を感じて振り返った。



あ。


また、あの人だ。


多分、大学生位なんだと、思う。


よくこの店で、ひとりで文庫本を読みながら過ごしている、背の高い男のひと。


視線が合って、彼が、目で軽く笑って、会釈する。


それだけなのに、なんだか、ドキドキする。


「マコト?」


吉田に声をかけられて、ボクは振り返る。


「なぁに?」

「あの人、おまえの知り合い?」

「え?違う、けど」

「だったら、あんまり愛想よくするなよ。マコトは可愛いんだから、変な奴に気に入られたら困るだろ」

「あー、洋平くん、嫉妬してるんだ」

「ばっか、違うって。ただ俺は、マコトが世間知らずですぐ人のこと信じちゃうからさぁ」


そんなこと、ないと思うけど。