「……おい」


だから俺は、襟を掴まれるまで、吉田くんが近づいてきたことにも気付かなかった。

視線を吉田くんに向けた瞬間、頬を殴られた。

思わずよろけた身体を、蹴られる。


「やめてっ!洋平くんっ!」

「だから俺はあんたが嫌いなんだ!マコトも、美知子も傷つけやがって!あんたにそんな権利あんのか!あんたのこと、大切に思っているやつを傷つけて、何が面白れぇんだよっ!」


堀井さんに抱きしめて止められながら、吉田くんが、俺に言葉を叩きつける。

俺だって。

大切な人を傷つけたくなんか、ない。

傷つけたくないから、離れようとしていた。


「……悪かったね」


俺は、吉田くんに、そう言って笑いかけた。