堀井さんは、振り返らずに、夜道を歩いている。

俺は、黙ってその後をついて歩く。


「陸さん」


前を見たまま。
堀井さんが、声をかけてくる。


「私、陸さんのこと、傷つけたんですね」

「え……?」


何を、言っているんだろう。

傷つけるようなことをしたのは、俺の方だ。


「私は、まこちゃんのこと、大好きだから。大切だから、陸さんに、まこちゃんのこと傷つけて欲しくなかった。……けど、陸さんにとっては、おせっかいだったんですよね」

「そんなことは、ないよ」

「ううん。私、まこちゃんにも怒られちゃうな。きっと」


堀井さんの歩く足が、早まる。