傷つけるためのキス。

そんな暴力を、いちばん与えてはいけない子だったのに。


「……堀井、さん」


そっと、声をかける。

堀井さんが、びくっ、と、肩を震わせる。

唐突に立ち上がって、堀井さんが応接室を飛び出した。

置かれたままの、薄手のカーディガン。

俺はカーディガンを掴んで、堀井さんを追った。

あんな状態で、ひとりで帰すわけにはいかない。


「待って」

「やだっ!離してっ!」

「大丈夫だから!もう、何もしないから!」


掴んだ腕を、必死に振り払おうとする堀井さんを、もう一度、抱きしめた。


「……大丈夫だから。……ごめん」