「堀井さん、吉田くんと付き合ってるんだよね。付き合っているなら、お手々つないで、喫茶店や映画館でデートして、それだけで満足しているわけじゃないだろう?」


ダメだ。
この子は、マコトのことを本当に心配してくれている。
なのに、俺が傷つけたりしちゃ、ダメだ。

分かっているのに。


「私、は」

「俺だっておんなじだよ。マコトに会って、慰めて。マコトの笑顔や、触れ合うだけのキスじゃ、我慢できなくなる。なぁ、そうなったら、マコトはどうなるかな?」


マコトはたぶん、そんなこと何も考えていない。
マコトが俺のことを慕ってくれるのは、俺が兄で、マコトに好意を与えたからだ。

マコトから好きになってくれたわけじゃ、ない。