「君は、部活は何かやっているの?」


退院前の診察の時、担当の先生は、ボクにそう訊ねた。


「いいえ。家の手伝いもあるので、部活は入っていません」

「そうか。なら、いいんだけどね。
前にも言ったけど、君の肺は、片方は今ほとんど使えない状態なんだ。
そのうち、もう少しは回復するだろうけど、他の人より、体に負担がかかりやすい」


目の前のレントゲン写真に、指で丸を書くようにして、先生はボクに説明した。


「だから、激しい運動は一切禁止。
走るのもダメだ。
ようやく、肺の傷がふさがったばかりだからね。
身体に、酸素がたくさん必要な状態を作らないように、日常生活に気をつけるんだよ」


走るのも、ダメなんだ。
なんだか、残念だな。


部活はしてないけど、ボクは、実は走ることが、ちょっと得意だったんだ。