ここは、恵美とオサムは、優しすぎる。

もっと、マコトのことを忘れさせてくれる場所は、どこだろう。

いっそ、ヤクザにでも絡んでやろうか。

物も考えられないくらい殴られれば、マコトのことも、忘れられるかもしれない。


「なによ、まだ会ったばっかりじゃない」

「恵美ちゃん」


少し酔った恵美が、俺の肩をつかむ。

その手を、オサムが抑えた。


「ねぇ、リクさん。
つらい恋なのかもしれないけど、ほんとに、その子のことは、大切にしてあげてね?
自分が楽になるために、逃げたりしたら、僕、リクさんのこと、軽蔑するから」


俺は、オサムを睨んだ。


「……何も知らないくせに、えらそうなこと、言うなよ」

「何も知らないから、言えるんだよ。
だって、リクさんにとって大切な恋なんだってことだけは、わかるもん。
僕は、リクさんに変わってほしい。
ちゃんとその子と向き合ったら、リクさん、きっと変われる」

「できない、んだ。向き合ったら、あいつが、傷つく。……それだけは、ダメなんだ」