「あ……」

「あ、おさむちゃん、久しぶりー」


恵美が、明るくオサムに手を振る。

オサムが、片ピアスに指先を触れながら、あ、という顔をした。


「ごめん。邪魔しちゃった?」

「全然。ね?祐介?」

「じゃ、お邪魔しちゃおっかなー」


オサムが、俺の隣に座った。

オサムとは、恵美と付き合う前に付き合っていた。

大学で出会ったが、初めて、同性の腰のラインに艶気を感じた相手だ。

何となく居心地が悪くて、俺は、黙ったままグラスに口をつけた。


「まだ、恵美ちゃんと続いてたんだ。びっくり」

「続いてないない。あたしもオサムちゃんと一緒。振られ組よ」

「振ってないだろ。俺の方が振られてるんだ、いつも」

「まだわかってないんだ。リクさん。
リクさんは言葉にしないだけで、先に僕のこと、振ったんだよ」