「そんなつもりは、なかったんだけどな」


別れよう、と先に言ったのは恵美だった。

恵美に限らず、これまで付き合ってきた相手は、いつも先に別れを告げてきた。

俺だって、そのたびに苦しかったし、自分にどこか拭いがたい悪い面があるのだろうか、と思いもした。


それでも。


こちらから先に別れると言い出さずに済んだことに、いくらかホッとしていたのも、事実だった。


永遠の恋愛なんかない。

他人である以上、いつかは、別れる。


「今だから言うけど、嫌いになったから、別れたわけじゃないのよ。
祐介を好きでいるのが、苦しくなったの。
……でも、今の祐介を見ていたら、もうちょっと努力したら、祐介を変えられたのかもしれないって、思う。
ちょっと、惜しかったな」

「あ、リクさん。久しぶりー」


明るい声が上から降ってくる。

恵美と同時に、振り返った。