「……ごめん」


なんとなく、謝ってしまう。

別れたとしても、以前付き合っていた相手に、他に好きな人間の影を見つけたら、いい気持ちはしないだろう。


「いいのよ。つきあってたのは、以前のことだしね。祐介とは、お友達でいるのが一番いい、って思い知ったから」

「どういう意味だよ」

「だって、祐介、お友達以上に私のこと近づけたこと、ないでしょ?」

「そんなことないだろ。付き合っていたときは、恋人だと思ってた」

「嘘。
初めは、祐介は優しいし、気前もいいし、楽しかった。
美味しい恋愛だと思ってたときもあった。
でもね。
ほんとに祐介のことを好きになったら、わかったの。
祐介にとって、私は他の友人と同じ距離なんだ、って」


なにを、言っているんだろう。

恵美と付き合っていたころ、俺は、恵美を大切にしていたつもりなのに。

もちろん、好きだと思って付き合ったし、長続きするようなら、親に紹介してもいい、と思っていた。


「祐介は、いつも優しくて。
でも、私とデートする時も、ホテルでも、友だちと世間話をするときと、同じ笑顔だった。
祐介の目がね。いっつも冷静で。
ああ、私はその他大勢のお友達と同じなんだ、って思い知らされた。
いつでも、取り換えのきく女なんだって」