俺は、恵美を見た。

いったい、何を言ってるんだろう。


「傷つける?」


むしろ、反対だ。

ひとりきりでいると、マコトのことを考えて、叫びだしそうになる。

ひとりになりたくなくて、気を紛らわせるために、夜ごと遊ぶようになった。


「怖い顔してるわよ、祐介。鏡見てないの?」

「……え?」


鏡なら、毎日見ている。

特に変わったとも思えない。


「まるで、触れることができない者にでも恋したみたいな、顔」


ぎくりと、した。

恵美は、こんなに鋭い女だったろうか。


「詩的な表現だね」

「正直、今の祐介の方が、私は好きよ。
でも、見ててこっちが痛くなってくる感じがする。
一度は、好きになった相手だもの。
自分以外の誰かに、そんなに苦しくなるような恋をしてるなんて、妬けるけど、それ以上に、苦しまないでほしい、って思うわ」