「いったいどうしたの?祐介」
恵美が、グラスを置きながら、俺の顔を覗き込む。
以前付き合っていた、同じ学部の女性のひとりだ。
色の奇麗なカクテルより、モヒートやソルティドッグが好きという女。
細い足首やきれいな指先に似合わず、あまり異性に媚を売ることが得意でないところが、返って俺には新鮮だった。
「なにが?」
「だって、彼女も作らなくなって、本命ができたのか、って噂だったのに。ここんとこ、毎晩誘いに乗ってるっていうじゃない」
「こうやって、別れた女にも付き合ってるし」
「いつの間に別れたのか、あたしはよくわかんないんだけどね」
「ひどいな」
俺は、笑った。
あなたに振り回される気はない、ときっぱり言ってきたのはそっちのくせに。
「別れた気がないなら、俺はもう一度付き合ってもらいたいけどな」
「今は、お断りね」
恵美が、モヒートのグラスのミントの葉を、マドラーで潰しながら、答える。
「どうして」
「私だって、一応女だから。祐介自身を傷つける道具にされるのは、ごめんだわ」