ふたりが、ちょっとためらってから、ドーナツに手を伸ばす。


「うまっ」

「やっぱ、ここのドーナツおいしい」


ふたりの顔が、ほころぶ。

おいしいものっていうのは、やっぱり役に立つよな。

思いながら、俺も、ドーナツをひとつつまんだ。


「嘘じゃなかった、って、どういう意味ですか?」


堀井さんが、ひと口ドーナツを飲み込んで、俺に尋ねてくる。

俺は、堀井さんに笑いかけた。


「言葉通りだよ」

「だけど、まこちゃんは陸さんのことが」

「以前はね。
マコトから聞いてないかな。俺は、マコトの腹違いの兄なんだ。
黙っていたから、マコトをとても、傷つけてしまった。
事故の前、本当は、マコトは俺と別れるつもりだったんだと、思うよ。
こんな事故があったから、なんとなく一緒にいたけど。
マコトは、俺とは兄弟でいるって、決めているんだと思う」