有希ちゃんの口元が、少しだけ、緩む。


「……いたく、ないの?」


小さな、声。

有希ちゃんの小さな唇から出てきた言葉に、ボクは頷いた。


「もう、痛くないよ?」

「ほんとに?」

「ほんとうに」


有希ちゃんが、お母さんから手を離して、ボクに近づく。

ボクの肩に、額をすり寄せてくるから、ボクは有希ちゃんを、軽く抱きしめた。

あ。

ちっちゃい子の体温って、あったかいなぁ。

有希ちゃんが、きゅっ、と、ボクにしがみついてくる。

少しだけ、傷に響いて痛かったけど、声に出さないように、飲み込んだ。


「……有希ちゃん」

「ごめん、なさい。まこ、ちゃん」


しゃくりあげるような、小さな、有希ちゃんの声。

ボクは、有希ちゃんの頭を、繰り返し撫でた。


「有希ちゃんは、なんにも、悪くないよ?だから、何にも心配しなくていいんだ」