泣いちゃうんじゃないかと思ったけど。

有希ちゃんは、ぎゅっ、と唇を引き結んで、まっすぐにボクを見ていた。

なんだか、ボクのほうがドキドキして、息苦しくなるくらい、一生懸命な瞳で。


そんなに、固くならなくていいんだよ。

もうなんにも、怖いことなんかないんだから。


そう伝えてあげたいけど、ボクに、うまくできるかな。


「有希子?」


有希ちゃんのお母さんが、有希ちゃんの手を軽く揺すって、声をかける。

ボクは、椅子から立ち上がって、有希ちゃんの前にしゃがんだ。


なんだか、初めて会ったときのこと、思い出しちゃうな。

あのときは、有希ちゃんのこと、泣かしちゃったんだよね。


「有希ちゃん。怖い思いさせて、ごめんね?」


精一杯、笑顔を作って、ボクは有希ちゃんにゆっくりと言った。

そうっと、有希ちゃんの肩に、手を乗せる。

有希ちゃんが、とっても緊張しているのが、手から伝わってくる。


「ごめんね。ずっと、怖かったよね。でももう、大丈夫だから」