「まあちゃんは、お父さんが大好きなのねぇ」


うちのお寺にお参りによく来るおばさんが、ニコニコ笑いながら、ボクに話しかける。


「自慢のお父さんです。尊敬しています」


ボクは笑顔を作って、答える。


「住職さんも、跡継ぎがしっかりされていて、一安心ですね」
「いやいや、まだ中学生ですから。これからどうなるか」


父とおばさんの世間話から、ボクはそっと、抜け出す。


跡継ぎ。
ボクのうちは、代々続いた、ちょっと大きなお寺だ。
ボクは一人っ子だから、このお寺を継ぐことになるんだと思う。


だけど。


ボクで本当に、いいんだろうか。
女の子を一度も好きになったことがない、きっとココロが少し壊れてる、ボクでも。