「あのね、陸さん。怒らないでね」

陸さんは、とってもボクを大切に思ってくれている。
ボク、あのときわかったことがあるんだ。

「ボク、陸さんて、やっぱり、お父さんにそっくりだって、思った」
「……え?」

陸さんが、少し表情を硬くする。

わかってるよ。
陸さん、ボクのせいで、お父さんのこと嫌っているんだよね。
でも、ボクは陸さんに、お父さんと仲直りしてほしい。

ボクには、最高の父さんがいるから。

「陸さん、あの窓ガラスが、邪魔だったんでしょう?ここが病院だとか、誰かに迷惑をかけるとか、何にも考えられないくらい」
「マコト、怒ってるのか?」
「そんなことないよ。だって、それだけ陸さんが、ボクのことを大切に思ってくれていたって、わかるから。……でもね、あの窓ガラスが、ボクだったんだなぁ、って、気付いたんだ。
陸さんがボクのことを大切に思ってくれてたように、陸さんのお父さんにとっては、陸さんがとても大切で、ボクは、あの窓ガラスと同じように、邪魔な存在だった。
……違うよ?ボクは、それを責めたり、悲しかったりしてるわけじゃないんだ。
そうじゃなくて、陸さんのお父さんも、陸さんのことが大切で、他のことが何にも見えていないんだと思うんだ」

息が、切れる。
なんだか、頭がまたぼーっとする。

でも。

これだけはちゃんと、言わなくちゃ。