「でも」
「マコト、俺が側にいるの、イヤか?」

ボクは、首を横に振った。
動いたら、ちょっとめまいがして、目を閉じる。

「マコトは、すぐ遠慮して、我慢しそうだから。ひとりにしたら、ナースコールも押さないで、一晩中苦しんでそうだ。そんなの、俺が嫌なんだよ」

ドアの開く音。
目を開けると、父さんが出ていくところだった。

ドアが、閉まる。

陸さんが、そっと、僕の頬に手をあててくれる。
陸さんの手、冷たくて気持ちいい。

「熱も、まだあるね。少し、水飲む?」

言われて、口の中がからからに乾いていることに、気付いた。

「うん」

頷くと、陸さんがペットボトルにストローを入れて、ボクの口にあててくれる。

うわぁ。
水がこんなにおいしいなんて、知らなかった。

こくん、と一口飲んで、ちょっと、むせた。
咳が、傷に響いて、痛い。

「マコト」

陸さんが、僕の肩をさすってくれる。
陸さんがいてくれるだけで、痛くてもなんだか安心できる。