曲った椅子を、もういちど、振り上げる。

「陸さんっ、やめてっ」

……え?

俺は、振り返った。
手から、パイプ椅子が落ちる。
病室に飛び込んでくる、看護師や医師たち。

マコトが、必死に身体を起こして、俺を見ていた。

「マコ…ト…」

「陸さん、どうしたの?どうして……」

言いかけて、マコトが、苦しげに咳をする。

「マコト!」

駆け寄って、マコトを、抱きしめた。

「痛い、よ、陸さん」
「ごめん、マコト。ごめんな」

マコトが、目を開けてくれた。
もういちど、話をすることができた。

「無茶させないで。離れてください。まだ手術が終わったばかりなんですから」

呆れたように、看護師が俺の肩を叩く。
手術?