吉田君に教えられた病室は、個室だった。

結局、花を買う余裕なんかなくて、エレベーターを待つ余裕もなくて、階段を7階まで駆け上がった。

ドアの前で、深呼吸をする。

俺が、落ち着かないと。
マコトは、人の気持ちに敏感だから、俺がうろたえたら、返って気を遣わせてしまう。


「マコト?」


ドアを開けて、そっと中に入る。
中には、マコトのほかに、誰もいない。
マコトは、ベッドの上で、眠っているらしい。
ドアを開ける音にも、俺の声にも、動かない。

そっと、近付く。

「マコト……」