おじさんが、携帯電話を拾ってくれる。

差し出されて、手を伸ばそうとするけど、うまく、動かない。

おじさんは、少し顔をしかめて、ボクの胸の上に、携帯電話を置いてくれた。


「ありがとう、ございます」

「俺にも、おまえさんくらいのガキがいるんだ。ま、俺んとこのは生意気だから、子供が車にひかれても、うまいこと逃げるだろうけどな」


そっと、おじさんが、ボクの額をタオルで拭いてくれる。

ちょっとあてただけなのに、タオルが真っ赤になってて、けっこう出血してるんだ、って、ボクは気づいた。


「死ぬんじゃねぇぞ。坊主」