「マコト」


吉田を安心させたくて、ボクは、必死に、身体を起こした。

そのまま、また倒れそうになるのを、なんとか、こらえる。


「ほら。大丈夫だから」


痛いけど、痛いのはなんだか自分じゃないところみたいで。
それより、身体が思うように動かないほうが、もどかしい。


「じゃあ、有希子、連れてくるから」

「だめだよ、有希ちゃんまで、晒すこと、ない」


ボクが勝手に飛び出したから、ボクが悪いんだから。


吉田の後ろ姿を見てから、僕はゆっくり、あたりを見回した。

植え込みのつつじの枝が、折れちゃってる。

ボク、植え込みに突っ込んじゃったんだ。


植え込みの上に、赤い、携帯電話。

陸さんの、携帯電話。