「有希ちゃんっ！」


みっちゃんの、叫び声。

ふわり、と、麦わら帽子が宙に舞っている。

それを追いかけて、大通りに飛び出している、有希ちゃん。

信号のない大通りは、車の勢いが速い。


立ちすくんでいるみっちゃんの横をすり抜けて、ボクは、有希ちゃんを追いかけた。


「有希ちゃん！危ないよっ！」

　
有希ちゃんは、トラックの前に飛び出している。
あんな小さい身体、運転席から見えるわけない。


とっさに、有希ちゃんの腕を掴んで、歩道に引き寄せた。
遠心力で、自分の身体が車道に引っ張られる。


目の前にトラックが来て、ボクはそのまま、麦わら帽子みたいに、宙に浮いていた。