床に、涙が落ちた。


忘れたい。
でも、今はまだ、忘れられない。


吉田の言う通り、陸さんと、別れてたらよかった。
もちろん、だからって吉田と身体だけの関係なんて、絶対嫌だけど。


でも、吉田の言う通りにしてたら、少なくとも、こんな思いはしなかった。


陸さんにとっては、血のつながった弟が恋人でも、平気なのかな。
ボクも、そんなふうに割り切れたら、楽だろうなぁ。


でも、ボクには、無理みたいだ。


顔をあげて、仏像を見つめる。
こんなときでも、仏様は、優しい顔をしている。


仏様の前に座れなくなるような自分にだけは、なりたくない。


ごめんなさい、陸さん。

胸の中の陸さんの笑顔を、ボクは頭を振って、かき消した。