「結局、それが決め手になって、おまえの両親は別れた。妹は、しばらくここで暮らしていたが、また好きな男ができたといって、お前を置いて出ていった。私は、止めなかったよ。お前を連れていくと言われたら、止めたと思うがな」

「え、そしたら、お母さんは、生きてるの?」

「……いや、結局、その男にも捨てられて、しばらくして癌で亡くなった。……私は、嘘がうまくはないからな。詳しくおまえの母親の話をしたら、つじつまが合わなくなりそうで、黙っていた」

「そう、なんだ」


父さんは、いつも、母さんのことを聞くと、軽く不機嫌だった。
無口なのはいつものことで、こんなに話す父さんは、初めてだ。


「誠。確かに、おまえは私の妹の子だ。だが、親戚の子を養子にするなんてことは、
よくあることだし、私はおまえを血がつながった息子だと思っている。わざわざ改めて話す機会がなかったから、こんな時になってしまった。……悪かったね」


「ううん。ありがとう、父さん」