「それは、覚えているよ。……ボク、父さんに怒られたって、思ってた」


何度も何度も、頭を壁に叩きつけられた。
あれは、このお堂だったんだ。
逃げようとしても、逃げられなかった。
逃げられないように、女の人に抑えられてた。

あれが、ボクの、お母さん。


「今日、あの人、ボクに「あのとき死んでいればよかった」って言ってた。……きっと、ボクのこと、殺したいくらい、邪魔だったんだね」

「マコト……ごめん」


陸さんが、うつむいたまま、呟く。
ボクは、首を横に振る。


「陸さんは、悪くないよ。誰かにとって、自分が邪魔なのって、悲しいけど」


邪魔するつもりなんか、なかったのに。
きっとあの人は、陸さんにとって、ボクが邪魔だと思ったんだ。


それだけ、陸さんのこと、大切に思っているんだ。