陸さんが、深く頭を下げて、背中を向ける。


「待ちなさい」


ボクを支えたまま、父さんが、陸さんに声をかける。

静かな、声。


「君も、来なさい。……君のせいじゃないことは、わかっている。だが、君も知っておいたほうがいいだろう。たぶん、全てを知っているわけじゃないようだ」


父さんが、僕の背中を、軽くたたく。


「ひとりで、歩けるな?誠。男の子なんだ、しゃんとしなさい」

「はい。ごめんなさい、父さん」


父さんに背中を押されて、ボクは、足に力を入れた。

大丈夫。ちゃんと、立てる。


父さん、何にも変わらないや。

今はそれが、泣きそうになるくらい、安心できる。