どうしよう。

……怖い。

止めなくちゃいけないのに。

陸さんが、怖い。



「陸さん……陸さん、やめて」



駄目だよ。

もっと、大きな声で止めなきゃ。

だけど、声が出ないんだ。

身体が、震えてくる。




(お父さん、ごめんなさい!)


繰り返し、壁に頭を叩きつけられた。

幼いころの記憶が、鮮やかに蘇る。


(ごめんなさい!もうしないから!いい子でいるから!)


頭をつかまれて、何度も何度も壁にぶつけられて。

どれだけ泣いても、謝っても、許してもらえなかった。

目の前が暗くなって、聞こえた、言葉。

(おまえなんか、生まれなければよかった)



……ずっと、忘れていた、言葉。