何か、別のこと考えて。
吉田のことじゃないこと。



「……まこちゃん?」



堀井の、いぶかしげな、声。
いつまでも、グラスに口をつけたまま固まっていたら、やっぱり、おかしいよね。



「……なんか、喉に、ひっかかったみたい」

「大丈夫か?あわてて食ったわけでもないのになぁ」



吉田の手が、軽く、ボクの背中を叩く。
その温かさに、また、泣きそうになって、ボクは立ち上がった。



「あの、ごめん、ボク、やっぱりもう帰るね」
「マコト……?いったい……」



これ以上、吉田の声も、顔も、少しでも触れたら、絶対声を上げて泣いてしまう。



うつむいたまま、ボクは、かばんを掴んで、店を飛び出した。