「あの、陸さん?」

「なんで今頃そんなこと言うんだよー」


え?


だって、陸さんが惚れ直したなんて言うから、つい、もしかしたら、って。


やっぱり、違ったのかな。



「マコト、いくら俺だって、好きじゃなかったらキスなんかしないって」



しゃがみこんだまま、陸さんが僕を見上げて、笑う。



「いまさら、そんなこと聞かれるとは思わなかったよ」

「ごめんなさい、でも」



だって、陸さんから、好きって言われてないし。

キスだって、挨拶のつもりかもしれないし。

ボクだけ、勘違いして舞いあがってたのかもしれないし。



ホントは。

ボクのこと、誰かが好きになってくれる、っていうことが、信じられなかったのかもしれない。



陸さんが立ち上がる。

そうして、ボクの前に立って、ボクの肩に両手を置いた。

真面目な、表情。



「俺、陸祐介は、佐野川誠くんが大好きです。
可愛くて、いい子で、いつだって抱きしめたいって思ってます。
好きだから、キスしたいし、笑っていてもらいたいって思ってます。
俺にとって、今いちばん大切な人です」


言って、陸さんが、微笑む。

嬉しい。

ボクなんかのこと、陸さんは、好きって言ってくれる。



陸さんがそっと、抱きしめてくれる。

ボクは、陸さんの胸に、顔を埋める。



陸さんの匂い。



「ごめん、まだ、俺、好きって言ってなかったんだね」



耳元で、陸さんが、囁く。



「大好きだよ、マコト」

「ボクも」

陸さんの胸に向かって、ボクは、小さい声で答えた。



「ボクも、陸さんが、大好き」