「マコト……?」



ボクは、吉田の胸を押して、身体を離した。

涙が、こぼれそうになる。



がまんしなくちゃ。

今だけは、吉田の前でだけは、泣きたくない。



「マコト」

「ボクはヘンタイだよ。でも、陸さんが好きなんだ。男の身体が好きなわけじゃない。好きになった陸さんが、オトコの人だっただけなんだよ」

「マコト、でもあいつは」

「陸さんのとこ、何にも知らないくせに!勝手なこと言わないでよ!」



ボクは、踵を返して、御堂に駆け込んだ。

吉田は、追ってこない。



ひどいよ。吉田。

好きじゃないけど身体だけ、って。

ボク、そんなこと望んだこと、一度もないよ。



吉田のこと、好きだった。

好きだったのに。



涙が、ボロボロこぼれて、御堂の床を濡らす。

ボクは、そのまま床に座り込んだ。

しゃくりあげるほど、涙が止まらない。



会いたい。

今、陸さんに会いたい。




会いたいよ。陸さん。