「吉田、違うよ。ボクが、陸さんとキスしたかったんだ」
「……え?」
吉田が、ボクの初恋だった。
ボクは同性にしか、ドキドキできない。
でも、そんなこと気付かれたら、吉田と友だちでいられないから。
ずっと、隠していた。
気付かれたら、吉田と友だちでいられない。
ウソをつき通しても、吉田と友だちでいたかった。
好きだって、告白できない代わりに。
だけど。
陸さんのことを、誤解されたくない。
ボクのせいで、陸さんのことを悪く思われたくない。
「陸さんは、ボクにとっても優しくしてくれる。ボクが勝手に、陸さんのことが好きになっちゃっただけなんだよ」
「何言ってんだよ、マコト。最初から、お前に目をつけてたのは、あいつのほうじゃんか。どうしておまえ、そんなにお人好しなんだよ。いいかげん気付けよ」
吉田が、ようやく僕の腕から手を離す。
そうして。
「吉田……?」
ボク、吉田に、抱きしめられてる?