「マコト君!」
授業を終えた陸さんが、走ってくる。
「ごめんな、待った?」
「ううん。ボクも、今来たところだから」
「ホントはもう夏休みなんだけどさ。どうしても、ゼミのまとめがあって」
「そうなんですか」
「マコト君は、もう夏休み?」
「今日からです」
「そしたら、一緒に旅行とか、行きたいね」
陸さんが、笑いながら、言う。
日陰を歩いて、大学の敷地内の庭園に入る。
昔は、よく、柵をよじ登ってこの庭園で遊んだ。
木登りをして降りられなくなって、泣いててみっちゃんに助けられたこともあったっけ。
「旅行、ですか?」
陸さんと、旅行。
行ってみたいなあ。
でも、父さんが許してくれるかな。