「なあに?」
「陸さんて、かっこいいよね」
少し声をひそめて、みっちゃんが言う。
「…うん」
「私が、まこちゃんの彼女?って、聞いてたね」
「なんだよ美知子、そんなことなんで喜ぶんだよ」
前を歩いていた吉田が、振り返って口を尖らせる。
「だって、嬉しいもん」
「俺は、嬉しくない」
吉田が、ふくれたまま、また前を向く。
そうだよね。
自分の彼女が、他のひとの彼女と間違えられたりしたら、いい気なんてしないよね。
「そしたら、洋平くんが違うって言ってくれたらいいことじゃない。そんな、ふてくされないでよ」
言いながら、みっちゃんが吉田の隣に並ぶ。
腕を組んで歩く二人の後ろを、ボクは歩いた。
どうして。
どうして陸さんは、あんなことを言ったんだろう。