となりのレーンのアカツキが意地悪そうに表情を崩し、ボールを持ち上げる。

 アカツキの手を離れた球は、カーブを描いてピンをなぎ倒した。

「むむ、ストライク……やるなアカツキ」

 お互い一歩も譲らず、とうとう最後の一投になった。

「負けないんだから!」

 整列したピンの真ん中に狙いを定め、私は重い球を放り投げる。

「あ」

 ボールが離れる瞬間、指にわずかな引っ掛かりを感じた。球は、軌道をかすかに逸れていく。

「うわ、やっちゃったぁ」

 音が響き、ボールはピンを1本残して奥に吸い込まれていった。

 頭を抱える私を横目で見て、アカツキが笑う。

「次、こっちが全部倒したら、俺の勝ちだね」

 スタイルがいいせいか、アカツキのフォームはきれいだ。

 細い足が曲がり、長い腕がしなやかに伸びると、そういう形のオブジェがあるんじゃないかと思うくらい、さまになる。